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悠々と流れる「モルダウ」・カラヤン指揮『我が祖国』より

2021.09.27 Monday

             

プラハ市街を流れるモルダウ川。私は残念ながらその姿を見たことはありません。

名曲『我が祖国』。体調悪化により聴覚を失いつつも作品を完成させたエピソードは有名です。そのなかでも「モルダウ」は、どこかで一度はきっと耳にしたことがある、あっあれか!、と思っていただける親しみのあるもの。

悠々と流れる川の流れ。ヨーロッパ大地の優しくも男性的な側面を感じさせる力強さ。なめらかでありながらも、何ものにも乱されることなく流れていく雄大な水の力。

モルダウを聴いていると、まるで太古の地球にタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。

そしてカラヤン。カラヤン指揮によるモルダウが、どれだけ美しく繊細なものであったか。それをようやく感じられる私となりました。若かった頃はただ著名な方だったから聴いていた、それが勿体無い・・・。音が操られ、オーケストラ全体が一つの有機体のように整えあげる指揮(まるで人間の生命活動の不可思議さに通じるかのようです)。

ヨーロッパにはいくつもの名高い川が流れています。音楽や絵画などのインスピレーションの源となり、芸術家たちが作品にしています。「モルダウ」。優しい気持ちになりたくなったら、是非。悠々とした、何ものにも縛られない自由さ(大自然の大きな力、つまり人間にはコントロール不可能な世界の神秘さ)に触れてホッと一息つきなくなったら、是非。

ヨーロッパの美しさ、民族の歴史、感性、大地で暮らす人々の命の発露として、音楽を楽しむ。そんな贅沢を楽しんでおります。

                 

初期ルネサンスの名画 美しいお姫様の肖像画

2020.12.31 Thursday

                 

2020年を締めくくる名画はこちら。美しい中世のお姫様。

中世の街を旅することがフランス留学中の私の楽しみであり、また研究でもありました。街並みの風景・その場にまつわる歴史・人々の暮らし。絵画を鑑賞する上で「場」、つまり、作品と「場」の問題という美学上のテーマがあり、できるだけ足を運びました。

以下の文章は、2011年6月4日に書いたものです。過去ブログカテゴリー「美術への招待」からデータ移行しています。ほんのひと時ですが、この作品とともにお過ごしくださいませ。私の大好きな作品の一つです。

美術への招待:

美しいものを観ると、気持ちがやわらかくなるので、昨日に引き続き、もうひとつ。この作品の作者は、15世紀イタリアで活躍したポライウォーロ兄弟。美しい横顔の肖像画は、この時代のひとつのモードでした。

1465~70年頃に描かれたもので、『若い婦人の横顔』と呼ばれています。婦人といっても、当然のことながら当時のセレブであって、私たち一般の人ではありません。

気品があって、優美で、知性と教養が満ち満ちていて・・。

大学生時代はひたすら、中世・ルネサンスのお姫様に憧れたものでした。文学を読むと、当時の貴族の娘達の生き方が想像できます。わかりやすいところで言えば、W・シェイクスピア作『ロミオとジュリエット』。

純真、可憐、情熱的。

この肖像画のセレブ姫からも、外面的な美しさにまさる品性の輝きが、私には感じられます。

美しいお姫様に召し上がって頂くつもりで、今日もお菓子を焼きました。クラフティー、美味しくできましたよ。フランスのリムーザン地方のデザートです。旬のサクランボをたっぷり使います。

                  

勝利の女神「サモトラケのニケ」の彫像 人類の宝・ヨーロッパ文明の遺産

2020.12.19 Saturday




ヨーロッパへの招待

過去ブログのカテゴリー「美術への招待」からデータ移行しています。2010年12月31日に記したものです。

ルーブルで一目惚れをし、この作品の前でどれだけの時間を過ごしたことでしょう。ギリシャ悲劇の作品群を思い起こし、ギリシャ・ローマ神話の世界に浸り、ヨーロッパ人が原点とする古典古代の世界が本当に実在していることを肌で確信させてくれたのがこの作品でした。

美しいものを見ると心が優しくなる。それを優雅というのだそうですが(パリ社交界でのある方のお言葉)、魂が震え上がるほどの感動を覚えました。以下、過去ブログの記載となります。

2010年、今年最後にご紹介する作品は、これ。有名な「勝利の女神・ニケ」の彫像。世界で最も美しい、と、そう確信している作品を、2010年を飾る最後の美術品として、皆様にご紹介します。

絵画よりも、建築よりも、音楽よりも、宝石よりも、この世の中のなによりも美しいと、そう確信できるものに出会えたことは、大変幸せなことだと思っています。

それだけで、人間の叡智を信じられますし、他国の文化、歴史を重んじる、そうした豊かさが心に生まれます。

敬愛するレオナルド・ダ・ヴィンチを超えて、なお美しく輝くのこ彫像は、古代ギリシャ美術の代表的作品。

流れるような曲線美、そして、今にも動き出すのではないかという躍動感。ヘレニズム期特有の派手なポーズ、ではありますが、優美さの中に、勇者を導くダイナミズムが、美しいバランスをとって表現されています。

この女神をのせた船、この女神を信じて戦う戦士達。神の恩寵をもたらすとされる「ニケ」が、船の甲板に降り立ち、その翼を大きく広げ、勝利を予告します。

歴史的には、ロードス人が海戦での勝利を神に感謝し、奉納したものとされていますが、その昔、この女神に勝利を託し戦っていた戦士達の、奮い立つような英気を想像し、古代ギリシャの世界に浸ることが、この作品との対話の醍醐味でしょう。

ルーブル美術館に所蔵されている沢山の傑作作品の中でも、特にこの「サモトラケのニケ」は、群を抜いて輝く、人類の宝であると思っています。

パリに行かれた際には、是非、ルーブルにお立ち寄りになって、この美しい彫像を鑑賞されて下さい。聖なる空間というか、神々しい風を、この作品から観照して頂けたら、大変嬉しく思います。

人間以外でなれるものがあるとしたら、私はあの女神になりたい・・・。あのとき、ルーブルで思った気持ちは、いまもまだ変わらず鮮明に残っています。