悠々と流れる「モルダウ」・カラヤン指揮『我が祖国』より
2021.09.27 Monday
プラハ市街を流れるモルダウ川。私は残念ながらその姿を見たことはありません。
名曲『我が祖国』。体調悪化により聴覚を失いつつも作品を完成させたエピソードは有名です。そのなかでも「モルダウ」は、どこかで一度はきっと耳にしたことがある、あっあれか!、と思っていただける親しみのあるもの。
悠々と流れる川の流れ。ヨーロッパ大地の優しくも男性的な側面を感じさせる力強さ。なめらかでありながらも、何ものにも乱されることなく流れていく雄大な水の力。
モルダウを聴いていると、まるで太古の地球にタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。
そしてカラヤン。カラヤン指揮によるモルダウが、どれだけ美しく繊細なものであったか。それをようやく感じられる私となりました。若かった頃はただ著名な方だったから聴いていた、それが勿体無い・・・。音が操られ、オーケストラ全体が一つの有機体のように整えあげる指揮(まるで人間の生命活動の不可思議さに通じるかのようです)。
ヨーロッパにはいくつもの名高い川が流れています。音楽や絵画などのインスピレーションの源となり、芸術家たちが作品にしています。「モルダウ」。優しい気持ちになりたくなったら、是非。悠々とした、何ものにも縛られない自由さ(大自然の大きな力、つまり人間にはコントロール不可能な世界の神秘さ)に触れてホッと一息つきなくなったら、是非。
ヨーロッパの美しさ、民族の歴史、感性、大地で暮らす人々の命の発露として、音楽を楽しむ。そんな贅沢を楽しんでおります。