東京・田園調布 お菓子教室・フランス料理教室・テーブルコーディネート教室 村松操 主宰/サロン・ド・トレミニョン テクニック・マナー・インテリジェンス

menu

もっと見る

「テーブルマナー」と「茶の湯」・企業研修「日本人が学ぶフランスの習慣」プレスタージュ各論(2)

2020.10.18 Sunday

お茶会にて
撮影許可を得て使用しています




茶の湯の世界は、深い精神性に支えられており、陰陽五行論に裏打ちされた儀式めいた奥深さに魅了されます。お点前の際、畳目1つ、つまり、ほんの数ミリ〜1センチ、身を置く位置を狂わせたなら、師匠から喝が入り、即座に正すことを求められます。お点前に隠されている美(意味するもの)はもちろんのこと、その後のお点前のすべてが崩れていくからです。

フランス料理のテーブルマナーにもそれに近いものがあるかと思われます。テーブルマナーは「非言語コミュニケーション」です。お互いの共通項を確かめ合い、同じ土俵でこれから信頼関係が築き上げられるものかどうか。人間関係を保つために食事を共にするということには、これから先の展開を読み取ろうとする人間の性と言っても過言ではないでしょう。

しかしながら、マナーレッスンの最後にいつも付け加えさせていただく言葉があります。それは、「今日、ここで学んだことは、大事なお席についたら、一旦、頭から外して忘れて下さい(その後のアドバイスは省略します)」というお願いです。ルールに縛られて、目的である信頼関係の構築や、相手の方への好印象を持っていただくこと・期待値を高めることに成功しなければ、ビジネスでのテーブルマナーを学んだ価値が失われます。

一座建立の精神で臨む、それが最も必要な心得です。

テーブルマナーは手段に過ぎません。手段と目的とが入れ違ってしまいがちなのは、茶の湯の世界でも同じこと。利休さんもおっしゃっています。美味しいお茶を点てること、そして、その亭主の気持ちを汲み取りいただくこと、それに尽きると。

author:村松操