東京・田園調布 お菓子教室・フランス料理教室・テーブルコーディネート教室 村松操 主宰/サロン・ド・トレミニョン テクニック・マナー・インテリジェンス

menu

もっと見る

妖しく美しく クリムトの黄金文様描写・装飾美の世界

2019.12.29 Sunday

クリムトの作品の中でも、とりわけお気に入りの『水蛇』(1904~07年)。妖しげな装飾美。クリムトの黄金装飾美の典型の一つと言ってもいいでしょう。

2人の女性が絡み合い、美しい髪の毛がそれを包み込むように、流れるように描かれ、水草の優しい曲線の流れと重なって、優美さを伝えているようです。背景となっている蛇の文様とも見事に組み合わせられています。巨大魚、蛸の足、海藻のようなもの。これらが画面下に描き加えられ、絵画世界がよりドラマティックに、神秘性に富んだものになっていると思われます。

左下に描かれている水に漂う海藻のようなもの。幼いころ素潜りをしていた時のことでした。太陽の美しい輝きが海面下に注がれていて、その光の先に、ゆらゆらと美しく姿を揺らす海藻の群れを見つけました。「なんて綺麗なの・・・」。美しさへの衝動にかられ、私は入り込んではいけない幻想の世界に踏み入るように手を伸ばしました。「!!!」。 手が・・・。そうです、これは絶対にやってはいけないこと。手に海藻が巻きつき、海の底に引きずり込まれます。もがいて引っ張れば引っ張るほど、海藻は手を縛るかのように私達を離さないのです。

息も少なくなっていくというのに、美くしい海の中を眺めている自分がおりました。急な潮の流れがはっきりと見え、死と隣り合わせにあることもわかりました。妖しくキラキラと輝く美しい海の世界。生命と死。クリムトをはじめ、19世紀末美術の画家たちがテーマにした題材です。

私が吐きだす大きな泡が尋常でないことに気づいてくれたお陰で助かりましたが、海の美しき魔物、とてつもなく美しく妖しく、命を落としかねないもの、「セイレーン」を想ったものでした。この作品に並々ならない思いがあるのは、個人的な体験によるものですが、この作品は彼の黄金装飾美という様式を代表する一枚であることは確かです。皆様にもそうした一枚があるのではないでしょうか。

過去ブログより:
2016年6月14日「美術への招待」

ヤン・ファン・エイク『受胎告知』 世にも美しい名画のひとつ

2019.12.29 Sunday

北方ルネサンスを代表する名画のひとつ。ヤン・ファン・エイク作『受胎告知』(1434−36)。

久々にこの作品とじっくり対面することになりました。いつ眺めても美しい。レオナルドの『受胎告知』とどっち、などという愚問は無し。比類ない美しさはどちらにも認められ、表現の違いはあるにせよ、「受胎告知」という物語の重要なシーンを見事に描ききっています。

油彩画の技法を確立したことで知られる兄弟ですが、油絵技法の発達があればこそ、現代につながっていくわけで、彼らの新しい美の発見は、美術史上に名を残すに値するものでした。

視覚表現の可能性の追求。
美術史というのは、その連綿たる繋がり、歴史です。

作家(作品の作り手)が見出した「未知なる可能性」への挑戦を讃え、後世に伝え、愛好家の方々を増やし、人間社会に「美」という心の潤いをとどめおく。そんな役割を果たしてくださる方々が増えることを望んでやみません。

一流の美しいものを見て、心が荒む人はいないでしょう。気持ちは晴れ、心は洗われ、ボ~~っと眺めているだけで何かが伝わってきます。絵画は、平和にもつながる貴重な役割も担っています。そうした思いを込めて、このコーナーを綴っております。

過去ブログ:
2016年10月3日「美術への招待」より

美しい中世の女王『イザベル一世』の肖像画

2019.12.29 Sunday

有名な「グラナダ陥落」で知られる女王、イザベル一世。

イタリアではフィレンツェ・ルネサンスが花咲いている頃、 現在のスペイン、ポルトガルではご覧のように中世の色合いの濃い表現が残っていて、 スペインの独特の歴史を垣間みることの出来る一枚です。

グラナダに埋葬され、今は安らかな眠りについている女王も生きている頃は激動の人生を送っていました。

コロンブスを支援したことでも有名です。
新大陸進出に援助を惜しまなかったとのこと。
かなりの英断だったと思います。
やってみればいいじゃない、的なかなり太っ腹な彼女の一面が歴史書によって伝えられています。

ヨーロッパ文学を理解していく上で避けて通れない「スペイン黄金時代」はこのイザベルとフェルナンドの時代だと言われています。

ルイ14世もそうですが、黄金時代を築く王様、女王様というのはとてつもないエネルギーで人生を駆け抜けます。
その息吹がこうした肖像画からも時代を超えて私たちに伝わってくるのだからステキ。

過去ブログ
2013年6月12日「美術への招待」より